最初私は何者だったのだろう。
今私は何者で、これから何者になりたいのだろう。
ドアを開けて最初の一歩を踏み出した瞬間、
無限の世界が広がっていると同時に、
何者かになる事を望み始めた瞬間、
“それ以外”であったかもしれない自分の可能性は、
少しずつ狭くなってゆく。
ドアの向こうにはどんな自分がいるだろう
この作品が出来るまでの経緯
この作品のキャンバスの大きさは50号だ。
普段描くサイズより少し大きいため、知人がオーナーを勤めるカフェの2階スペースを借りて制作していた。
広い広い屋根裏部屋のような場所で、お洒落な秘密基地のような空間でもあり、この場所にいるだけで創作意欲を掻き立てられそうだった。
ここに真っ白なキャンバスを持ち込んだ時点では、まだどんな作品を描くかすら決まっていなかった。
ぐるりと部屋を見渡すと、室内に何処からか外されたドアが置かれていた。
ドアとしての役目を果たせていないその不思議なドアと出会って、このドアを主人公に絵を描くことにした。
ドアを開けた瞬間、向こうにはどんな景色が広がっているのだろう?
見知らぬ場所や初めて行く地で開ける扉を、ほんの少しの緊張感と好奇心を持って開く。
そしていつもの場所へ帰るとき、見慣れた扉を穏やかな気持ちで開ける。
どんな扉であろうと、踏み出せばきっと迎え入れてくれるだろう。