引力だろうか?
真夜中の海は、ほんの少し、足を浸してみたくなる。
けれど つま先だけでは済まされなくなって、そのうち足首を引っ張られる。
冷ややかな気持ち良さの中、引力は私のことを更に誘う。
ふくらはぎを、膝を、そして太腿へと。
闇夜より黒い海の中では、まだ見ぬ生き物たちが蠢いているかもしれない。
私の左足の小指を鋭い牙で噛みちぎるかもしれないし、私の右太腿を毒針で刺すのかもしれない。
そんな 0.1パーセントの恐怖を纏いながらも、やっぱり引力には逆らえずにいる。
どこまで進めば、気が済むのだろう。
優柔不断な性格のおかげで、もう 引き返すことはできない。